一旦山は越えたけれど長くは持たないだろう。
泊まり込みの看病で家族が倒れてしまい、自宅に強制送還した。
人工呼吸器がはずれ、酸素マスクに戻った。
はずそうとするので手足は縛られている。
その姿は、かわいそうであると同時に身に覚えのあるもので
複雑な気持ちで見ている。
どちらもつけた事がある。
まず人工呼吸器。
喉に管を入れるのではなせず、ものも食べられず、痛い。
痛みを取るために麻酔をしているので意識は殆どないけど
時々ふーっと気がつく。
声をかけられると反応はするものの、、、
誰なのか、とか、そういうことはよく分からなかったし
あんまり覚えていない。
でも、看護婦さんは認識できたりする。
あれ何でだろう?
私の時は、ベッドの左右の柵を足でがんがん蹴り
痣ができたので足まで縛られた。
寝返りがうちたかったんだと思う。
枕がずれて気持ち悪い、胸が苦しいから(というか全身が)体勢かえたい、
暑い、、、そんなことを思っていたような。
酸素マスクになると管はとれて声は出せる。
でも、ぼんやりしていることが多かったな。
このときは話しかけている人が誰かちゃんと分かるけど、
眠っている時は苦しくないから、あんまり起こされたくなかった。
口を覆われているあの独特の違和感。
痛くはないけど、すっごいすっごい嫌だった。
固定しているバンドのかんじも。
人間、ころっと死ねないなあ。
自分や、病院で会った沢山の人たちを見て本当にそう思う。
今、家族で私が一番冷静だ。
感染防止のためにあまりそばに寄れないかわりに
病院側とあれこれ話をしたりしている。
本当は浴衣の買出しとか、送り迎えもできるといいんだけど。
深い悲しみほど、あとからゆっくりやっている。
少しずつ虫食い穴が広がって、ある日涙が流れるだろう。
悼むにはまだ早い。